制作の場所、そこに泊まれるか

日本から持って来れば良かったと悔やんでいる物が一つある。醤油でもインスタント味噌汁でもない。それは愛用の寝袋である。いや実際持って来ようか迷ったんだよ。
ところでKonstfackは24時間使用可能である。もちろん夜間は施錠されるのだが、学生には一人一人に鍵を渡され何時でも自由に出入りが出来る。となると、「どこに住んでるの?」との問いに対し「…学校」と答える輩がいるのも、さもありなんといった次第ではあるのだが、それを可能にしているのは、学校側がむしろ居住を奨励しているかような設備にある。
kitchen.jpgこのキッチンを見よ!冷蔵庫が2台に電子レンジが3台、なになに、自動食器洗い機まで付いてるぞ。学生達はやおら冷蔵庫から食品を取り出し、調理を始めるのである(ただ、きれいに使おうという配慮には欠けている)。このようなキッチンがアトリエに隣接し、またシャワールームも当然の如く配備。
アトリエはというと、まず最初に為すべきことはベッドかソファかを持ち込むことのようだ。そして思い思いに模様替えをして楽しむ。元々の直線的なホワイトキューブが全く感じられなくなるまで作り込む部屋もある。そんなので、制作のスペースが確保出来るのだろうか?出来るのだ。例えば、木材を加工したり金属を扱ったりする共用のスタジオが別にあるため、作業的なことはそっちで行い、マイアトリエではデスクワークに勤しむといったスタイルが成立する。環境が良すぎて逆に恐い。
僕の使用しているアトリエは、僕を含め3人でシェアしているのだが、他のアトリエも見て回ると、留学生に対して実に「害」の無いアトリエを割り振ってくれたのだな、ということが良くわかるのであった。僕とアトリエを共にする彼らは、少なくともそこに「住」んではいない。


Do It Yourself、ホームセンターに

このところある物(作品制作に使おうと思っている)を探していて、教えてもらったセカンドハンドストアをあちこち訪ね回っていた。大別すればどこの店も、古着、食器、家具、古本などを扱っているのだが、実は一軒目を訪れた時に、こりゃあどこに行っても無いだろうなという直感があったのだが、まあ確かに紹介するとしたらここより他はないのだろうという感じだし、ひょっこり遭遇しないとも限らないので一応見て回った。結果としてはやっぱり無かったのだけれど。
fredells.jpg次の手段として、新品ならば何処にあるのだろう、と助言をもらって行ってきたのがストックホルムの少し郊外、Fredellsというかなり大きなホームセンターのような店。日本のホームセンターでもそれなりに品揃えがあるので、特に種類の豊富さで圧倒されるということもなかったが、敷地面積は相当広い。木材に関しては、色んな形状の物が取り揃えてあり、かなりの量があった。日曜大工が盛んなのだろうか。
さて、目的の物が見つかったのかというと、店頭には無かったが、たぶん、ここで入手できるのだろうと思う。ただ、店員に詳しく聞かなくてはならず、その際に必要とするややこしい説明も咄嗟には言えそうになかったので、その場は退散した。もうちょっとプランも煮詰めなくてはならないと思う。
ここに来る時バスを利用したのだが、地下鉄もバスも運営しているのがSL社というところで、今持っている定期券で乗れることがわかった。行きの分だけ新たにチケットを購入してしまった。


スウェディッシュと英語

留学生用にスウェーデン語のクラスがあるのだが、当然それは英語で行われる。実はスウェーデン語以前に、まず英語においての意思疎通もままならないような状態なので、まさに(スウェーデン語を)習うより(英語に)慣れよ、というところ。であるから、この半年間のクラスを経ても、スウェーデン語はとても習得できそうにないし、せいぜい片言で一文かそこらスウェーデン人の前で喋って見せて、(その時ばかり)チヤホヤされるのが関の山だろうと思う。まあ、それも大事かなと。
時に思うのは、スウェーデン人は大抵英語を話せるのだが、だからといって皆が皆「上手い」英語を話すのかといったら決してそうではないのではなかろうか、ということだ。「上手い」というのはよく日本で教材にされるCDとかに比べてだ。もっとも日常生活でCDのようなきれいな英語など話すはずもないのであるが。ただ、スウェーデン人学生が自分の作品を話す際に、「英語で説明するのは難しい…」と口にしたのを僕は聞き逃さなかった(最悪なことに、僕はしばしばこのフレーズを使ってしまうから)。
なんだかこっちに来て、思ったよりリスニングが出来ないなあ、と感じてはいる(もちろん話す方も)のだが、しかしながら、あなたの英語がもう少し上手かったら、もっと良く聞き取れると思うんだけど…などとは、口が裂けても言えないのだ、僕は。
CDを聞いて英語を学んだ僕はCDのような英語を話そうとして話せないのだが、かといってブロークンな英語だったら能弁に振舞えるかというとそういう風にもならない。もう少し慣れがほしい。


デパ地下のお惣菜

nk.jpgストックホルムには少し雪が積もり、それはよく言われる「片栗粉のような」雪で、サラサラとして、雪だるまは作り難いだろうな、と思う。
「REA」というのが「セール」という意味なのは雰囲気で一目瞭然だったのだが、街に出ればどこもかしこも「REA」なのである。これがいつまで続くのか分からないが、ならば何か買える物があったら買ってしまおうといそいそと出掛けたのであったが、わずか半年でまた日本に戻ることを考えれば、これといってあれこれ買い揃える必要もないように思え、いつまでも手ぶらのままうろうろしているのである。
そうこうするうちにお店が閉まっていくので(日曜日は4時か5時、日が沈むとともに閉店してしまう。平日はもうちょっと長く開いてる)、もう少し遅くまで開いているデパートに入ることにした。
そのデパートの地下にはスーパーが入っており、アパートの近くのスーパーよりも品揃えが豊富である。今日は何を食べようかと思案していたところ、目に入ってきたグラム売りのお惣菜を買った。
そういえば、こうやってお惣菜を買うのは、前に一人暮らしをしていた時と同じなのであった。当時、自炊生活などというものは早々に諦めてはいたが、しかしご飯だけは自分で炊けるので、お惣菜屋さんでおかずを二品と豚汁を買い求め、それを夕食としていたことがあった。
お惣菜がはかりの上に載せられ、頼んだ分量より多かったために少し減らされ、またはかりに載せられる。その一連の流れの中での、はかりの指す数値を眺めていて、ふとそのことを思い出したのである。それはちょうどこの暗く寒い季節でもあった。


ストックホルム7日目

街中をふらふらしてるだけであまりに楽しくて、特に何もしなくても生活しているだけで、いや生活とさえ言えないかも知れない、そこにいる気分だけで満ち満ちた心持ちになってしまう。改めて何かを制作することを欲することもなく、言いようのない満喫感を味わい日が暮れるのであった。
konst.jpg今日、Konstfackのガイダンスがあり大学内を見て周り、自分のアトリエをあてがわれ、こうしちゃいられないと身の引き締まる思いがした。訳の分からぬ充足感は吹き飛んだ。
制作に向かうのは、何かに事欠いているのを認めたときだ。そりゃそうだろう、日々幸せに満ち足りているのならば、わざわざ制作なんて七面倒なことをやる必要なんてない。ただ、何が足りないのかははっきり見えないもので、にもかかわらず、それを認めるためには少しばかりの気力が要る。
寒さは山形と変わらないと前に書いたが、いやいやそんなことは全然なくて、やはり冷え込みは厳しく耳が千切れそうに寒い。そうはいっても一歩建物の中に入れば快適そのもの。なんでだろう、ヒーターでガンガンに暖めてる訳でもないのに。もう造りが全然違う。


Moderna Museet / Nationalmuseum

moderna-museet.jpgModerna Museet(現代美術館)に行ってきた。
ここのコレクションは、マティス、ピカソからニューマンやウォーホルそしてリヒターまで、近.・現代美術史をほぼコンプリートに近く網羅している。満遍なく揃ってるな、という印象。スウェーデンの最近のペインターの作品などもある。
企画展はDiane Arbus、Lisette Model、Christer Strömholmという同世代の写真家の写真展。
これは結構良かった。Lisette ModelはArbusの先生。Christer Strömholmはスウェーデンの最も有名な写真家だそう。なんか美術館周辺にカメラを首から提げた学生みたいな子がやたらといるなあと思ってたら、これを観に来ていたみたい。
Nationalmuseumにも行ってきたが、この美術館の目玉であるレンブラントは現在貸出中で残念ながら拝むことが出来ず。レンブラントが8点あるらしいが一つも出ていなかった。セザンヌ、ゴーギャン、ルーベンスなどが良いのがあった。
基本的に美術館は無料なのである。


ストックホルム1月11日

朝、7時になっても太陽は出てこない。
Konstfackに電話。昨日と同じ待ち合わせ場所に人を寄越すと言う。結構待たされたが、無事落ち合うことができた。一緒に寮に行き、鍵をもらう。彼女はもう一人誰かを迎えに行かないと行けないらしく帰っていった。
荷物を置いて街に出る。今はセールシーズンらしく街中はにぎわっている。女の子と一緒に歩いたらさぞかし楽しいだろう、みたいなお店が一杯ある。ユニクロみたいな店で帽子を買う。
思っていたほど寒くはない。もっと極限的な寒さを想像していたがそんなことはない。山形と変わらない。今だけかな。
スーパーで、パンと果物とジュースとシャンプーを買って帰る。